第5楽章 バグダードの夕昏と夜

 真昼の炎熱にすべての機能を停止していた砂漠の都市サラセンの都バグダードは、夕昏れが近づくにつれ、ものうく動き始める。人々の行動は傾く夕陽とともに活発になる。突如! モスクの廻塔から絶叫するような男の歌声が起こり、人々は一斉に地にひれ伏す。歌声は回教の夕べの祈り「大いなる我等の神アラー」の唱経である。ひれ伏した人々は遥か南方のメッカを遥拝する。唱経の声は再び活動を停止され、物音のなくなった街に響き渡る(ソロマンドリン)。唱経の声が地平に沈む陽とともに長く尾を引いて消えると、静寂にとざされていた街は騒然と動き出す。そして詩人は詩を―歌い女は歌を―踊り子は踊りを―といわれた絢爛たるバグダードの歓楽の夜がくる。(マンドリン・ソロの後から始まるこの部分は優えんな女の踊り、荒々しい男の踊りでひとつのピークを作り、酒宴の狂騒に終わる)