第7楽章 地中海の静かな船旅(リュートの歌) / 第8楽章 ローマへの帰還(アッピア街道)

– 第7楽章 –
長い長い苦難に充ちた砂の海の旅は終わった。砂漠の船ラクダに別れ、紺碧の海の航海である。この部分はギターだけの四重奏で優雅なリュート音楽として奏され、曲は停止することなくそのまま…。

– 第8楽章 –
イタリアの南端に近いブリンジンに上陸した一行は休む間も惜しくローマへ向かう。“すべての道はローマへ”この道こそローマに集中する街道を代表するアッピア街道である。鈍重なラクダに代わった馬の軽快な足どりさえももどかしく、終結に急ぐまっしぐらの行進。一行全体の心は悦びを超え、緊張に追いやられる。イタリアも南下すると、あの苦しみを重ねた砂漠地帯を回想させる乾燥した地帯が続く。それも北上するにつれ、次第に姿を消し緑の色彩が地表をこまやかにおおい始める。一行は沿道の村人等の歓呼を浴び、帰郷の喜びをかみしめる。馬の足をもってしてもなお、数日の旅が続くが、碧空にそびえるモント・メタの山影を東に臨むようになるとローマは近い。糸杉の林が連続し、さらに傘松の並木が街道の左右に見られるようになると、いよいよローマが近づく。
 一行は遂に前方にローマの片影を認め、息をつめる。 踊るように快走してきた曲調は突如、音をひそめ極度の緊張に陥る。7つの丘、ローマを囲む赤い城壁、その中に林立する塔。ああ、ひときわ高くサンピエトロ大聖堂も見えてきた。クライマックスに向かい増幅増速を重ねてきた曲は遂に爆発する。ローマの入口、サン・セバスチャンの門をくぐる! 聖歌を想わせる和音の展開につれ、鐘が鳴り、その中で金管が高くキャラバンの主題を絶叫し、この大幻想曲の終局を飾る。