第4楽章 蜃気楼とカラ・ブラン黒い嵐(砂嵐)

 灼熱の太陽の照りつける下で、風は落ち空気はカラカラに乾き、何もかもが燃えだしそうに熱っしきっている。疲労困憊したキャラバンの中から歓喜があがった! ギラギラと陽炎の燃える砂漠の地平線に突然大いなる湖が出現したのである。水だ! いや、水だけではない。モスクの尖塔が、人家が、歩く人の姿まで見える。街だ! 街に着くのだ! しかし、これは蜃気楼なのである。それはつかの間の悦びをよそに消える。砂漠では蜃気楼の現れた後は必ず暴風が起こる。はたして人々は、今一大湖水の現れたあたりに真っ黒な竜巻を発見し戦慄する。それは見る間に接近し、猛然キャラバンを襲う。今まで白熱光を投げかけていた太陽は黒い砂のスクリーンに赤黒くぼやけ、天地は夜の黒衣に包みこまれ、吹き上げられる砂は人もラクダも埋め尽くそうとして荒れ狂う。これこそ砂漠地帯でもっとも恐れられるカラ・ブランである。